来年10月からの医療事故調査制度(事故調)開始に向け、運用ガイドラインの準備が本格化する中、医療現場からWHO(世界保健機関)のドラフトガイドラインに準拠するよう求める声が上がっている。有害事象の事例を収集し、そこから教訓を得る報告システムの設計や運用について解説したガイドラインで、世界各国で参考にされているものだ。その日本語版の監訳を担当した中島和江氏(大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部)は、WHOガイドラインの意図や狙いについて以下のように語った。【聞き手・坂本朝子】
そして、彼らの活動の中で生まれたのが「WHO DRAFT GUIDELINES FOR ADVERSE EVENT REPORTING AND LEARNING SYSTEMS(有害事象の報告・学習システムのためのWHOドラフトガイドライン)」で、05年にホームページ上で公開されました。現在、この組織は既に解散していますが、WHOの中に医療安全に取り組む恒常的な部署が設置され、今ではWHOの1つの大切なミッションになっています。
ところで、「所詮ドラフト」などと言われることがあります。気になったので、ガイドライン作成の中心人物である米国のルシアン・リープ氏に、ドラフトのままである理由を尋ねてみました。すると、作成当時は世界的に試行し、その知見を基にちゃんとしたものにするつもりだったようですが、前述の組織の解散などで、なんとなく立ち消えになっているだけではないかと言います。
つまり、特段の理由があってドラフトのまま置いておいて、最終的なガイドラインにできないわけではないので、「所詮ドラフト」という理解は正しくないと思います。むしろ、ここに書かれているようなことを順守している国が、今までの医療安全のリーダーであり、今もリーダーであることを考えると、「世界の安全モデル」と言えます。
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