「救命不能だが、直ちに心停止には至らない」との状況が発生した場合、どのように対応すべきか―。患者や家族の意思表示の確認が難しい救急や集中治療の現場で参考にしてもらおうと、日本救急医学会、日本集中治療医学会、日本循環器学会の3学会は共同で、終末期医療のガイドライン案をまとめた。3学会の意見集約に尽力した日本救急医学会の横田裕行理事は「救急・集中治療で死が不可避となった患者の尊厳を重視し、家族やその関係者に対応する場合の考え方の道筋を示した」と話している。【新井哉】
「偶発的に受傷した重篤な外傷や予期しない疾病では、患者のほとんどは意識がなく、自らの意思表示ができない」。救急や集中治療の現場で終末期の意向を確認することが困難な理由について、横田理事はこう説明する。がんの終末期では患者本人が人生の幕引きである終末期をどのように迎えるかを考え、その意思を家族や関係者などと共有する時間的な余裕がある一方、救急や集中治療の終末期では、極めて短い時間に死が迫ることが少なくないからだ。
患者の家族や関係者らは、こうした切迫した事態を受け入れる余裕がなく、冷静な判断ができないことが多いという。医療機関側は、患者本人や家族らの意思を確認できないまま、“医療者の良識”に基づいて治療を始めざるを得ないのが実情だ。
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