文学作品などで取り上げられ、古典的な疾病のイメージが強い「結核」。欧米諸国と比べて日本の罹患率は高く、国内だけで年間2000人以上が死亡している。「古くて新しい病気」と専門家は警鐘を鳴らすが、結核を診断できる医師は減少の一途だ。結核と診断されるまで“野放し”となった患者が院内などで排菌し、他の患者や職員らに感染が広がるケースが後を絶たない。主要な抗結核薬が効かない耐性結核菌の集団感染も院内で発生しており、専門医や自治体の担当者らは、院内感染対策のマニュアルを見直すなど、警戒を強めている。【新井哉】
「発病者4名は初発患者と同病棟内の入院患者であり、他の病棟への行き来はない」。静岡県は今月5日、県内東部の精神科病院で結核の集団感染が起きたと発表した。入院患者や初発患者の家族、職員ら76人が接触者健診の対象となり、初発患者を含め5人の発病者、13人の感染者が判明。感染者には、発病を予防するための予防薬投与や経過観察が行われているという。
静岡県のケースと同じように、ここ数年、精神科病院などの閉鎖環境における集団感染が目立っている。2年前に起きた東京都内の精神科病院(認知症病棟)の集団感染では、初発患者を含む10人が結核を発病し、このうち3人が肺結核や誤嚥性肺炎で死亡した。医療・行政関係者に与えた衝撃は大きく、厚生労働省結核感染症課が各自治体に対して注意喚起の通知を出す“異例の事態”に発展した。
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