手術で誤嚥性肺炎をなくす―。肺炎は一昨年に国内死因の3位となり、中でも誤嚥性肺炎は増えている。口から食べられなくなれば胃ろうを造設することが、当たり前の選択肢となったが、社会的な問題も生じている。
近年、手術によって誤嚥性肺炎を防ぐ「声門閉鎖術」が一部で行われている。手術により、痰吸引などの気道管理の負担が減るため、在宅で過ごしやすくなったり、再び口から食べられたりする可能性もある。その一方で、声門を閉じるために、患者は声が出なくなるデメリットも受け入れる必要がある。声門閉鎖術は、胃ろうに代わる選択肢になるだろうか。【大戸豊】
嚥下機能は年齢とともに低下するほか、脳血管障害などにより、誤嚥が増加することもある。そもそも食道と気道は交差しているため=図=、嚥下機能が落ちれば、それだけ誤嚥しやすくなる構造になっている。
声門閉鎖術は、左右の声帯部分を閉鎖し、気道と食道を完全に分離する。これで誤嚥性肺炎は生じなくなるが、声門を閉鎖するために、声は出せなくなる。患者は術後、人工声帯を使ってコミュニケーションを取るようになる。
大原綜合病院(福島市)の鹿野真人副院長(耳鼻咽喉科、頭頸部・顔面外科)は、過去8年ほどで200例を超える声門閉鎖術を行ってきた。
鹿野氏は、喉頭がんに対する喉頭全摘出手術を行う中で、長生きする患者が多いことを経験的に感じていた。がんの再発がなかったほか、手術で気道と食道が完全に分かれるようになったことで、肺炎を起こさなかったのだ。
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