少し肌寒い4月下旬のある日、聖ケ丘病院(東京都多摩市)ホスピス病棟の1室から、オカリナの音色が響いてきた。見上げてごらん夜の星を-。今はもう意識がはっきりしない患者さんに、「臨床宗教師」の佐々木慈瞳(じとう)さん(45)が、そっと曲を届ける。歌が好きな本人のためにとリクエストした家族は、「曲の間、唇を少し動かして、わたしの手をぎゅっと握っていた」と喜んだ。
■死を前にわき上がる心の苦しみに寄り添う
「死んだら何もなくなる、そう考えると苦しい」「正しく生きてきた自分が、なぜこんな目に遭わなければいけないのか」「死んだら神様のところに行けるよね」-。
終末期医療の現場で、死を前にわき上がる患者・家族の思いに接してきた佐々木さんは、「医師や看護師には言いにくいスピリチュアルペインにかかわるのは、宗教者として役に立てる場面の一つじゃないかと思います」と話す。
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