昨年6-8月、国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)で、入院患者13人がセレウス菌の菌血症を発症するアウトブレイクが発生。このうち2人が死亡したことなどから、大きく報じられた。アルコールなどで消毒しても、芽胞を形成して生き残るセレウス菌は、病院を含む生活環境に広く存在しており、多くの医療機関にとっても対策が求められそうだ。中央病院の感染制御室の江崎稔室長らに、アウトブレイクの経緯や、求められる対策について聞いた。【佐藤貴彦】
調査ではまず、タオルやシーツ、枕カバーなどのリネン類を疑った。菌血症が発生した病棟には偏りがなく、特定の職員や機器が感染源だとその説明がつかないと考えたからだ。
増菌液を用いた培養方法で、1病棟の使用前のリネン類を調べたところ、清拭用のタオルを中心にセレウス菌が検出された。そこで、全病棟でより詳しい調査に取り掛かるとともに、清拭用のタオルが感染源だと想定して対策を講じた。
同月22日には、院内調査委員会を設置した上で記者会見を開き、アウトブレイクとその対応について公表した。その後、アウトブレイクが終息したと12月25日に判断。今年1月には院内調査の結果をまとめて、感染防止対策地域連携加算に係る連携を行っている慶大病院(同新宿区)と国立国際医療研究センター病院(同)に外部評価を依頼し、調査報告書を4月に完成させた。
中央病院によると、昨年6-8月に13人が菌血症を発症して以来、10月と今年2月に1人ずつが発症。しかし、いずれも「アウトブレイクとの関連性はない」と判断している。
■25項目のチェックリストで感染対策を徹底
(残り2064字 / 全2897字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】
【関連キーワード】