巡回検診車でのX線撮影に医師が立ち会っていないのは違法ではないか-。2012年2月、市民からの1本の電話がきっかけだった。電話を受けたのは山口県下関市役所。下関市はこれまで、当然のように医師の立会いをさせてこなかったが、確かに診療放射線技師法上は立会いが必要とされている。今国会では同法26条改正案の審議が進んでおり、成立すれば検診車での胸部X線撮影のみ立会いが不要になる一方、乳房や胃部X線撮影などでは引き続き立会いが必要だ。この法改正は現実を一部追認する形だが、医療にまつわる規制緩和が進みづらい実情も浮き彫りになった。【丸山紀一朗】
現行の同法26条2項は「診療放射線技師は、病院または診療所以外の場所においてその業務を行ってはならない。ただし、次に掲げる場合はこの限りでない」とし、その例外として「多数の者の健康診断を一時に行う場合において、医師または歯科医師の立会いの下に百万電子ボルト未満のエネルギーを有するX線を照射するとき」と規定している。つまり、検診車でたくさんの人を対象とする場合は例外に当たるが、その際には医師の立会いが条件になっているのだ。
ではなぜ下関市はこれまで、検診車に医師を立ち会わせていなかったのか。その理由を探るためには、話を過去にさかのぼる必要がある。実はこの問題は過去に何度も、持ち上がっては消えというサイクルを繰り返してきた歴史がある。
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