救急やへき地医療の認定基準を満たせなくなった社会医療法人の“救済策”を厚生労働省が打ち出した。同省は認定取り消しの手続きを改正し、3月末に社会医療法人を認定する都道府県知事宛てに通知。その中で、医療提供体制の存続への考慮を求めた。この改正で、認定基準以下に転落した社会医療法人であっても、すぐには認定が取り消されず、1年間の猶予期間が与えられることとなった。なぜ認定取り消しの手続きを改正する必要があったのか。その背景と課題を探った。【新井哉】
「1年間の猶予を与えつつ、状況に応じて柔軟に対応していく運用を進めていきたい」。昨年11月に開催された医療法人の事業展開等に関する検討会で、厚労省医政局指導課の担当者は委員らに対し、同省が練った案を示した。救急や災害、へき地医療などを担う社会医療法人が認定を取り消された場合、累積所得に課税されて財務状況が悪化し、地域医療に深刻な影響を与える恐れもあったからだ。
医療法人には医療保健の“本来業務”に法人税が課されるが、社会医療法人は非課税扱い。だが、認定を取り消された際は、認定時点までさかのぼって所得に課税される。認定期間が長期にわたった場合、「医療機関の存続が危ぶまれるほどの巨額の一括課税が生じる」との懸念もあった。一括課税について財務省主税局は「非課税の公益法人の一般的なルール」との見解を示していたため、厚労省は同局と「現実的な対応」を話し合ってきたという。
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