新人職員が働き始める4月、院内ではさまざまな研修が行われる。感染防止対策もその一つ。院内感染が発生すると、施設名が公表され、経営に支障が出る恐れもある。手指消毒などの日々の積み重ねが、将来の感染予防につながるため、入職時の意識付けが重要だ。院内感染は病床の規模を問わず、どこでも起こり得る。限られた医療資源の中で、各病院はどのような対策を講じているのか―。現状を取材した。【敦賀陽平】
感染防止対策において重要な役割を担うのが、感染症対策を専門とする医師(ICD)や看護師(ICN)の存在だ。だが、中小規模の病院では、こうしたスタッフの確保は難しく、ICDやICNがいたとしても、通常業務との兼任が多いため、担当者の負担増も問題となる。
大阪市淀川区の大阪回生病院(310床)では10年ほど前、院内にICT(感染防止対策チーム)を立ち上げたものの、ICDとICNがいないため、ラウンド(巡回)に踏み切れない状況が続いた。こうした中、近年の診療報酬改定でICTの取り組みが評価されたこともあり、ICDとICNが不在のまま、一昨年からラウンドを開始したという。
「感染防止対策委員会の中では、『ラウンドをやるべきだ』という意見が以前からありました。ICDとICNがいないと、保菌か感染かの見極めが難しいため、足踏み状態でしたが、不満を言っていても仕方がないので、『スタンダードプリコーション(標準予防策)』の確認から始めようという話になりました」(同病院・中央検査部技師長の竹花眞粧美さん)
現在、副院長(呼吸器科の医師)、看護副部長、薬剤師、竹花さんの4人のチームで月1回、病棟などを回っている。ラウンドでは、手洗いなどの手指衛生に加え、病棟内の感染症患者の把握、マスクや防護服の着用方法などを確認している。毎回、テーマは職員には知らされておらず、抜き打ちのミニテストも行っているという。
「手洗い後の水分がきちんと拭き取れていなかったり、防護服の着用の順番が間違っていたり、基本的なことが意外にできていないことが分かりました。ラウンドを始めてから、職員の意識付けがある程度できるようになったと思います」(竹花さん)
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