刑務所などの受刑者が受ける「矯正医療」が今、崩壊の危機にひんしている。最大の原因は医師不足だが、矯正医療は法務省が管轄しており、厚生労働省との連携も課題の一つだ。欧州では、フランスが矯正医療の所管を司法省から厚生省に移すなど、司法と医療の権限の分離が進んでいる。こうした政策を日本で生かすことはできるのか-。このほど京都市内でシンポジウムが開かれ、日欧の有識者が意見を交わした。【敦賀陽平】
フランス国内の受刑者数は約6万6000人。施設側は、受刑者の医療に関する協定を病院側と結んでおり、施設内の医療は24時間体制となっている。現在、国が定める連携病院が179施設で、職員の数は約2600人に上る。このうち常勤医がおよそ5分の1を占めるという。
同国で矯正医療の移管のきっかけとなったのが、刑事施設内におけるエイズや麻薬中毒者の増加だった。
政府は1994年1月、公衆衛生と社会保障に関する法律を制定し、施設の医療を一般の水準まで引き上げるため、受刑者や家族の社会保険制度への加入を義務化。これに伴い、矯正医療も司法省から厚生省に移管された。
また、2002年春には、患者の権利を定めた法律が制定され、受刑者が生命の危機に陥った場合、刑の執行を一時停止することになった。さらに、09年の法改正に伴い、受刑者に関する医療者の守秘義務規定が盛り込まれるなど、受刑者の権利を保障する動きが広がったという。
(残り1236字 / 全1832字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】