まさか、結核とは思わなかった―。かつては国民病とまで呼ばれた結核。国内では「排除された」と思われがちだが、欧米諸国の罹患率に比べて「日本はまだ高い」(厚生労働省)のが実情だ。医師や看護師の発病も相次いでおり、罹患した医師らに接触して検診対象となる患者が、数百人に上るケースもある。こうした状況にもかかわらず、厚労省の調査で、埼玉など4県が、結核の予防指針に基づく予防計画を策定していないことが判明。患者への二次感染を防ぐためにも、医療現場と行政が一丸となった取り組みが急務だ。【新井哉】
「集団発生には至らなかった」。昨年10月に静岡県伊東市内の医師が肺結核と診断された事案にかかわった関係者は、約400人の患者を対象にした接触者検診で、結核発病者が1人もいなかったことに、胸をなで下ろした。
医療機関の医師や看護師が結核と診断されるケースが相次いでいる。昨年1年間、大学病院など少なくとも6施設で、医療関係者の結核事案が判明。国立病院機構千葉医療センターでは看護師4人が結核を発病。京都府立医科大附属病院と近畿大医学部附属病院でそれぞれ医師1人、滋賀医科大医学部附属病院と佐賀市立富士大和温泉病院でもそれぞれ看護師1人が結核と診断された。いずれも接触の可能性が高い患者を、検診対象者に選定。患者に事情を説明するなどの対応に追われた。
感染症法に基づき、接触者の健康診断を実施する―。静岡のケースでは、医師が結核と診断されてから、すぐに県が調査を開始し、数日で、この医師が635人の診療を行っていたことを把握。判明から10日ほどで、この医師から診察を受けた患者に対し、説明会の開催通知を発送した。また、県疾病対策課と熱海保健所に相談窓口を設置し、健康相談にも対応。説明会開催後に接触者検診を実施したところ、患者の発病者は「ゼロ」だったという。
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