「救急患者を断らない」「病院の収益を上げる」などの目標を掲げ、組織全体でベッドコントロールに取り組む医療機関が増えている。病床管理部門の設置、医療職と事務職の連携強化など、病院ごとに取り組み方はさまざまだが、システム化への対応などハード面の改善はもちろんのこと、職員の心情への配慮といったソフト面でのフォローアップに注力するところも多い。人を動かすのは、やはり人。受け入れにより負担が増える職員の不満解消や困っている問題を解決する手助けなどの地道な活動が、病床稼働率を押し上げている。ベッドコントロールを積極的に取り組む医療機関を取材すると、このソフト面の対応が、いかに重要かが見えてきた。【坂本朝子】
移転の準備段階から同院の立ち上げに携わった看護部長の安田照美さんは、「大学そのものも経済的に潤っているわけではなく厳しい状況の船出の中、経営をいかに安定させるかが重要で、“病床の運営・管理”が大きなキーワードだった」と当時を振り返る。
■「空床は院長床」という考え方を根付かせた
移転前は、事務部門に入院センターを設け、病棟医や病棟師長と連携して病床管理を行っていたが、稼働率は80%台後半だった。そこで、さらに稼働率を上げながら医療の質を高めることを目指し、実際に患者を受け入れる看護職がかかわったほうがよいと考え、院長直轄の独立した部署として病床運営管理部を設け、そこに専任で病床管理をする「ベッドコントローラー」の師長を1人配置し、多くの権限を与え、機能させていくことになった。
まず、軌道に乗せるため、ベッドコントローラーにはマネージメント能力が高く積極的に動ける師長を配置。当初は、新しい組織だったため、院内では十分に認知されていなかったが、看護部が中心となってバックアップし、新しい考え方を浸透させていった。診療科ごとに病床数はあるが、たとえ診療科のベッドであっても「空床は院長床」という考え方で、空床があれば患者を入れる権限があるベッドコントローラーの判断でベッドを運用するという意識へと職員全体が変わった。
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