茨城県北で在宅医療や訪問看護などを提供している「いばらき診療所」。管理栄養士の古賀奈保子さんは、介護保険制度がスタートする前の1997年から、訪問栄養食事相談を行ってきたこの分野の先駆者だ。この間には病院でのNST(栄養サポートチーム)が大きく普及したが、在宅での栄養相談の普及にはまだ遠い。現場を見ながら、今後の普及のカギを考えてみた。【大戸豊】
要介護5の修平さんは週3回デイサービスに通うが、日中は寝たままで過ごすことが多い。糖尿病も患っており、最近ではインスリン注射を打っている。
古賀さんは修平さんの上腕の周囲や、皮下脂肪などを測る。
「腕回りが前回より4ミリ増加しました」
アルブミン値も上がるなど、食欲の落ちていた修平さんの栄養状態が回復していた。
「この調子でおいしく食べてくださいね」と声を掛ける。
その後はリビングで家族から現在の状況を聞く。
修平さんは、妻の幸子さん(仮名)が作るミキサー食を中心に、家族に介助されながら食事を取っている。最近、食が進まないことが家族の気がかりだ。
修平さんは寝ていることが多いので、古賀さんは十分に目を覚ましてから食事にすることを提案する。また、温かいものだけ食べさせるのではなく、時折冷たいお茶ゼリーも交えて刺激を与える「交互嚥下」を勧める。
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