理化学研究所の発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の研究グループは昨年夏、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った世界初の臨床研究に着手した。新年に入り、研究は新たな局面を迎える。iPS細胞から作製した網膜色素上皮細胞の移植手術が今年夏にも、同市内の先端医療センターで行われるからだ。同グループでリーダーを務める高橋政代さんは、「絶対に成功させる」と決意を新たにする。【聞き手・敦賀陽平】
無事、国に研究計画を承認してもらい、一つの到達点に来た。これまでの研究が節目を迎えたという気持ちです。ヒトのiPS細胞ができた07年に、「5年で臨床研究をする」という話をしていました。ちょうど5年後に計画の申請までこぎつけたので、約束は果たせたかなと思っています。
―お仕事以外ではいかがでしょうか。
子どもたちが大学に進学して、今は夫婦2人なので、「ここはどうなっているんだ」とか、家でも仕事の話ばかりしています(笑)。主人(京大iPS細胞研究所・高橋淳教授)も臨床研究の準備をしているので。本当に24時間、仕事のことを考えていますね。
―この5年間で、iPS細胞をめぐる状況は様変わりしました。
5年前のシンポジウムで、「わたしたちが最初に臨床研究をやる」と言った際、「たぶん法律が足かせになる」という話をしていたら、昨年11月に「再生医療安全性確保法」と「改正薬事法」が成立しました。これは本当に想定外の出来事でした。(京大教授の)山中伸弥先生のノーベル賞の受賞も関係しているかもしれません。
―山中先生とは、頻繁に連絡を取っているのですか。
全然取っていないです。お忙しい方ですので、めったに会うことはありません。最後に話したのは昨年の夏ごろですかね。研究の方針を報告しました。
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