2020年の東京五輪で核テロが発生した場合に備え、DMAT(災害派遣医療チーム)に放射線災害の対処能力を付与する動きが出てきた。来年以降、東京都内のDMATを対象に被ばく医療などの研修が行われる見通しで、すでにテロ対策訓練の実績がある都立広尾病院(渋谷区)などが、搬送先の候補に挙がっている。核・生物・化学兵器(NBC兵器)によるテロを想定した国民保護訓練にも、最近は医師や看護師らが積極的に参加。災害拠点病院だけでなく一般の医療機関や医師会でも、テロ対策の機運が高まりつつある。【新井哉】
「日本は福島第1原発事故で放射線災害への対処方法を学んだ。その教訓は、東京五輪のテロ対策に十分生かせる。テロ対策を学ぶDMATの研修では、被ばく医療の教育を最初に行うべきだ」。長年にわたり災害医療にかかわってきた医療関係者は、こう強調する。
災害医療関係者が懸念していることの1つに、核・生物・化学兵器による負傷者への適切な対応を知らずに引き起こされる「二次被害」がある。1995年に起きた地下鉄サリン事件では、除染が行われずに負傷者が医療機関に搬送されたため、サリンの二次中毒で少なからぬ医療関係者に健康被害が出た。こうした被害を出さないため、医療関係者に対し、テロ発生時の対処や防護方法といった教育の徹底が求められていた。
オリンピックのような大規模イベントの会場でテロが発生した場合、多くの負傷者が発生し、医療救護チームの出動も予想される。しかし、DMAT隊員の養成研修では、傷病者の観察手順やトリアージといった災害医療の教育が中心で、NBC兵器テロに対する教育はほとんど行われていないのが実情だ。
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