東京慈恵会医科大附属病院(1075床)の年間手術件数は1万5000件を超える。国内の大学病院の中で最多の水準だ。2008年に世界で最初に血管撮影装置とナビゲーションシステムを導入。現在では3室のハイブリッド手術室を活用して、ステントグラフト治療など高度な技術が求められる分野でも実績を上げている。【香西杏子】
同大の手術件数が増加したのは運営改革に着手した07年以降。 06 年に年間9134件だった手術数が11年には1万5301件となり、6000件以上増えた。改革の成果は件数の多さだけではない。年間約2億円の医療材料費削減、手術にかかわる医療スタッフの離職率低下などを実現する「ひと粒で3度おいしい」改革だ。現在、全国から多くの医系大学の関係者らが同大に足を運び、オペレーションシステムの活用法を学んでいる。
この改革の立役者は、同大医学部脳神経外科教授、手術部診療部長の谷諭氏。脳、脊椎脊髄領域でこれまで2500-3000件の手術に携わってきた。スポーツ臨床領域では、サッカーやテニスの日本代表選手が海外遠征する際に同行する。「経営畑の人」でも、「事務畑の人」でもない、根っからの「医療畑の人」だ。谷氏の改革を2回に分けてリポートする。前半では実施した改革の具体的な内容、後半ではその改革に至る「考え方」を紹介する。
前編
■けちけち集団タスクフォース発足
■医療材料費を2億円引き下げるためにできること
■運営システムの総入れ替え
■医師の業務縦割り化で、手術室フル稼働へ
■効率化とは、本来業務に専念できる環境づくり
後編
■システム化=効率化ではない
■「医療畑のプロ」の経営努力とは?
■「効率的な組織」を実現する人間関係
■「医療畑のプロ」が素人になる
■医療者としての誇りとの共存
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