ひもで縛って閉まらない防火戸や排煙設備の未設置、無届けの増築―。患者ら10人が犠牲となった福岡市博多区の有床診療所火災。消防や警察による現場検証で、防火設備の不備が次々と明らかになった。こうした“違法施設”がある一方、「患者の命を守る」と職員が一丸となって防火対策に取り組む施設もある。警報機やスプリンクラーといったハード面の充実だけで、本当に被害を最小限に抑えられるのか―。医療機関に必要とされる防火対策を探った。【新井哉】
「防火戸の下、ここに物は絶対に置かないように」。昭和大病院(東京都品川区)で午前9時から始まった院内点検。有賀徹病院長が、火災時に煙の充満を防ぐために使われる防火戸を指さし、病棟の看護師らに指示した。
同病院では、週に1回、有賀病院長と井上正事務部長、各部署の担当者らが院内点検を行っている。この中で最も重視しているのが、職員の意識向上や情報共有といったソフト面だ。病院のトップと現場の担当者らが一緒に点検することで、課題や改善策の共有につなげる狙いがある、予算措置が必要な場合でも、井上事務部長や資材担当者のアドバイスを基に、その場で判断が可能だという。
「チーム医療と同じで、職種の垣根を超えた防災意識の共有が大事」。有賀病院長は、こう強調する。月に1回ほど、院内の防災担当者を集めた災害(防火)対策委員会の分科会を開催。この分科会に出席した職員を中心に、部署ごとの話し合いやブロック訓練を実施し、問題点があれば、対策委員会で防災マニュアルを改定するなど、院内の「セキュリティーホール」を埋める作業を続けている。
(残り1691字 / 全2379字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】