「この感覚を、どんな言葉で医療者に伝えたらいいのか分からない」-。患者のそんな悩みを解決する「懸け橋」の研究が行われている。カギとなるのは、各地域の方言と、「きりきり」や「ずきずき」といった痛みを表すオノマトペ(擬音語や擬態語)だ。方言研究者の竹田晃子・国立国語研究所特任助教は、患者が症状をうまく伝えられない「言葉の壁」を、患者だけでなく医療者が意識することにも意味があると話す。【佐藤貴彦】
方言は、一部の地域に限定された問題で、都市部の病院などは無縁と思われがちだ。しかし、竹田氏は、こんな事例を紹介する。
長野県出身のAさんはある日、脚立に上って物を取ろうとしたら、バランスを崩して落ちてしまい、足首をひねった。腫れてきたので、念のため、千葉市内の病院を受診した。Aさんが診察室に入ると、医師は「きょうは、どうされましたか」と説明を促した。Aさんが、患部をさすりながら、「高い所の物を取ろうとしていたら、『おって』しまいまして」と言うと、医師も看護師も血相を変えた。慌てたAさんが「『おった』だけですから」と強調すると、「そんな状態で、どうして歩いて来たんですか」などと医師にしかられた。
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