高齢化に伴って増える認知症への対策は、待ったなしの課題だ。認知症の人が地域で安心して療養生活を送るためには、患者家族、ケアマネジャー、介護職員、かかりつけ医など、患者にかかわるすべての人が情報を共有し、連携を深めることが求められる。このほど神戸市内で開催された、兵庫県医師会がコーディネート役を果たし、多職種が参加した日本プライマリ・ケア連合学会第27回近畿地方会では、大阪大学大学院医学系研究科精神医学分野講師の数井裕光氏が、「連携はシステムとして動かさないと難しい」と述べ、患者情報を共有するためのツール「つながりノート」を活用した取り組みを紹介した。【坂本朝子】
補完システムとして具体的に挙げたのは、▽連携ファイル(改訂後に「つながりノート」と改称)▽疾患別・重症度別ガイドブック「認知症知って安心!-症状別対応ガイド」(メディカルレビュー社)▽連絡会-の3つ。
連携ファイルは、2009-11年度に数井氏が研究代表者を務めた、厚生労働科学研究費補助金を受けた研究事業の一環で、認知症患者を支える人たちの情報共有を図るために考案されたのが始まり。患者1人に1冊作成し、介護者が常に携帯、患者にかかわるすべての人で使用するもの。前半部分は情報共有をする交換日記のようなイメージで、後半部分は診療や検査結果などを記す母子手帳のイメージで作られている。同事業が終了した現在も改訂が重ねられており、取り組みは継続している。
また、疾患別・重症度別ガイドブックは、家族介護者や介護職員への教育資材として考案されたもの。原因疾患によって、BPSD(周辺症状)やその対応が異なり、患者に応じて必要な情報が異なるため、疾患別・重症度別で10種類に分け、患者ごとに必要な情報が分かるよう工夫した。
さらに、連携ファイルの活用方法も含め、地域でさまざまな問題を話し合う連絡会は、「顔が見える、継続的な関係づくり」に重要で、数井氏は、みんなでつくっていくという姿勢が必要であるとした。
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