災害時に海上で支援活動を行う「病院船」の建造に向けた動きが活発化している。内閣府が来年度予算で設計費を概算要求。病院船を保有する米国などが国際貢献の分野で積極的に活用するなど、国内外で関心が高まりつつある。実際に被災地で医療活動に従事した国会議員や、洋上医療拠点運用訓練に参加した君津中央病院(千葉県木更津市)の北村伸哉・救命救急センター長らに実現に向けて求められる機能や役割などを聞いた。【新井哉】
「もし、被災地に病院船が派遣できていたならば、もっと手厚い医療支援が行えたはずだ」。東日本大震災の際、被災地で医療支援に当たった今枝宗一郎衆議院議員は、こう強調する。
震災直後、今枝議員は医療体制が崩壊の危機にひんしていた福島県いわき市で、医師として支援活動に従事した。「あらゆる薬が足りなかった。特に薬の投与が毎日必要な慢性疾患の患者への対応が難しくなっていた」と振り返る。
東京電力福島第1原子力発電所事故の影響を受け、震災直後のいわき市への物流は、ほぼ途絶状態。放射能汚染の懸念から、宅配便業者も同市内への配送を見合わせていたため、診療に必要な薬の確保が至上命題となっていた。今枝議員が所属する愛知県医師会も自腹を切って薬などの支援物資を被災地に輸送。限られた輸送ルートで支援物資の陸送が続いた。
しかし陸路では、空輸や海上輸送に比べ、被災地に届けるまで時間がかかった。「陸路以外の物資輸送の必要性を痛感した。被災地の港湾施設などに直接アクセス可能な病院船があれば、もっと早く状況を改善できた」(今枝議員)と指摘する。
超党派で病院船の建造を推進する議員連盟の会合で、医療従事者としての意見を求められることもあるという。今後、焦点となる病院船の建造隻数については、日本海側と太平洋側をカバーする観点から、2隻の建造を要望。1隻をアジアやアフリカ諸国などの医療支援に派遣し、日本の平和外交に役立てることも考慮すべきだとし、「発展途上国を中心に、質の高い日本の医療を必要とする地域はたくさんある」と国際貢献の意義を強調する。
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