奈良県南部の山岳地帯に位置する南和医療圏は、県の面積のおよそ6割を占める広大な地域だ。だが、県の総人口に占める割合は6%に満たず、過疎化と高齢化が同時に進行している。さらに、医師不足が深刻化する中、入院患者の6割近くは県内外の他の医療圏に流出。へき地医療の要となる公立病院の再編が急務となっている。こうした中、県と南和の12市町村は昨年1月、病院を共同運営する「広域医療組合」を設立した。南和の医療は南和で守る―。再生のキーワードは「機能分化」にあった。【敦賀陽平】
現在、南和には県立五條病院(199床)、町立大淀病院(275床)、国保吉野病院(99床)の3つの公立病院があるが、いずれも急性期の病院で、リハビリや長期療養の患者のニーズに十分に対応できない現状がある。また、医師や看護師が不足する中、多くの医療スタッフが必要となる急性期病院だけでは、効率的な医療資源の活用にはつながらず、圏内の救急医療にも支障が出始めている。
南和の総人口は約8万2100人(昨年10月現在)と、県内の二次医療圏の中では断トツに少ないが、逆に高齢化率は32%と最も高い(県平均24%)。南和の高齢化率は、日本の2030年の将来推計に近い数字だ。
広域医療組合によると、年間の入院患者数は推計1100人(09年度の国保・後期高齢者医療制度レセプトデータより)。このうち約6割の患者は圏外に流出し、その半数近くが、北側に隣接する中和医療圏へ流れているという。医療スタッフの不足、患者の減少、そして医業収益の低下―。これらが悪循環となり、地域医療の崩壊に拍車を掛けている。
こうした中、10年夏、県と南和の12市町村による協議会が設立された。1年余りの議論の末に生まれたのが、3病院の機能分化を柱とした再生プランだった。
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