「ここには何が建つのですか?」-。建築中のクリニックを見て、近隣の住民からこう尋ねられることがしばしばあった。無理もない。外観からは、診療所であることは全く分からない。実は、このクリニック、室内も診療所らしからぬ、まるでモダンな民家のような空間が広がる。廊下は板の間で、待合室には暖炉を囲むように上品ないすが並び、建物の真ん中には太陽の光が降り注ぐ吹き抜けの中庭まである。治療を受けるリニアック室でさえ、入り口のドアは木で覆われ、室内は板の間、壁には絵が掛けられている。【坂本朝子】
同クリニックの池永弘二理事長は、放射線治療について、「最先端の治療で、手術しなくても治るというのが放射線治療の特長の1つです。もう1つは、末期がんで骨に転移し、痛みが強い場合に、疼痛コントロール目的でまず選択される治療でもあり、治療の対象となる患者さんは多いようです」と説明する。しかし、末期がん患者への放射線治療は不要とする医師もおり、放射線治療の効果に対する認知が進んでいないことが、普及を妨げる要因の1つではないかと指摘する。
そして、「例えば、喉頭がんの場合、外科手術をすると声が出なくなります。しかし、放射線治療であれば、機能を温存してがんを治療することができます」と、放射線治療ならではの利点が、患者にとっては意義が大きいと強調する。
「すべてを放射線治療にすればよいという意味ではありませんが、患者さんにとって必要な放射線治療を届けられるように、微力でもお役に立ちたいと思ったことがきっかけでした」と、クリニックを設立した思いを明かした。
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