精神疾患の急患が運び込まれる医療現場で働く救急医らの疲弊が著しい。病院に勤務する精神科医が減り、精神科を標榜するクリニックなどで夜間診療が行われず、救急医療機関に負担が集中しているからだ。厚生労働省の検討会でも、精神科救急が取り上げられ、議論が続けられているが、即効性のある打開策は今のところ見当たらない。一部の地域では関係機関との連携や精神科病院の輪番制の強化が図られている一方、医師不足で精神科入院病棟の閉鎖に追い込まれる医療機関も出てきている。精神科救急の現状とその課題を探った。【新井哉】
「大暴れして2-3時間スタッフをくぎ付けにしながら、実は軽症で、診療報酬もほとんどないのが実態」。夜間に運び込まれる精神科や急性アルコール中毒の患者への対処に忙殺される救急医療の現場の状況を、二次救急病院の医師はこう説明する。
医療機関側としても、手間のかかる急患の受け入れは、できれば避けたいのが実情だ。東京消防庁が5年前、管内における救急搬送の受け入れ状況を調査したところ、医療機関側の受け入れ困難理由として、「急性アルコール中毒」「背景として精神疾患あり」「薬物中毒」「認知症」が上位を占めた。大阪市内で行われた全数調査(1か月間)でも、搬送先を決定するまでに要した平均時間は、薬物中毒が25.4分、精神疾患が11.3分と、全体の平均時間(5.3分)を大幅に上回る結果が出ている。
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