厚生労働省によると、院内保育所は2011年度末現在、全国で2555か所に上る。7対1入院基本料が導入された06年度以降は増加の一途だ。今いる人材を流出させないだけでなく、新たな戦力を確保する上でも、院内保育所は重要なアイテム。近年は、24時間保育や病児・病後児保育など、その内容を充実させる病院も目立ってきた。【烏美紀子、敦賀陽平】
10年1月の開設。取材に訪れた日は、1歳から3歳までの3人が落ち着いた様子で遊んでいた。そこへ、室長を務める渡邊美砂医師(同病院小児医療センター)が顔を出す。「もしもしするよー」と子どもたちの背中に聴診器を当てると、「うん、大丈夫」。子どもたちとにっこり笑い合った。
大学には、職員向けの附属保育園(定員45人)があるが、病児対応は不可。今は高校2年と小学6年になった2児の母である渡邊医師も、子どもが熱を出すたび、途方に暮れた経験を持つ。附属保育園を拡充する形ではなく、病児保育室を新設することで、文部科学省の科学技術振興調整費モデル事業を活用した。感染症に対応するための陰圧空調の設置費用は大学が投資したが、改装費や人件費などはモデル事業の枠組みで賄った。
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