中安一幸【厚生労働省政策統括官付情報政策担当参事官室室長補佐/北海道大学大学院保健科学研究院客員准教授】
種々の分野においてICT化の進展が目覚ましい。
情報機器の価格の低廉化による普及、高効率化は、ユーザー側のICT活用術の向上やデータの安全管理への理解が進んだことと相まって、日々の業務を通じて作成される記録や書類、指示・伝達事項などをデータとして蓄積することを可能にした。
さまざまな個人情報のうちでも、とりわけ機微性が高いとされる医療情報を扱うに当たり、ICT化の黎明期においてはデータ化、ネットワーク化へのためらいが見られたが、機器やサービスの低価格化やユーザビリティーの向上、安全管理指針の整備などにより、情報化が急速に進展しつつある。
動き始めた病院のクラウド活用(下)- 画像を外部に保存、コスト比較が重要に
今後の医療情報化の方向性を占うため、現下の状況を筆者なりに分析し、医療機関におけるICT導入の動機について仮説を立てるとすると、 (1)(まだ安価であるとまではいかないが)機器・ネットワーク商品等の普及と低価格化
(2)(四苦八苦・試行錯誤の末にようやく獲得しつつある)ユーザビリティー
(3)(やや後手後手の感もあるとしても)法制・指針等の整備
に加えて、
(4)検体検査、画像検査などの測定・分析機器や撮影機器、治療機器等の各種モダリティの技術進展が著しいこと
(5)日々蓄積していく診療情報等の有用な使い道に(医療機関が)気付き始めたこと も挙げることができよう。(その他、タイミングの問題だとか、周囲の同調圧力だとかいうこともあるかもしれないが、ここでは論じにくいため深く立ち入らない)
そうすると、(4)に関係してくる医療機関は、相当程度高度な情報処理をする必要があるほどのモダリティを有していることになるし、(5)については、自施設に有する診療データを分析・解析して何らかの成果を見いだせる程度、すなわち相当量の診療データがあるという前提があって、ICT導入の動機となり得たと推察することができそうである。
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