病院が画像データを院外のサーバーに保管するなど、「クラウド」を活用する動きが始まっている。
十数年前から医用画像はフィルムから電子保存に移行してきたが、データの保管場所は院内などに制限され、民間の情報処理事業者への委託は認められていなかった。
しかし、2010年2月に厚生労働省が「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第4.1版)」を示し、経済産業省や総務省が事業者向けガイドラインを整備したことから、民間事業者のデータセンターへの外部保存が可能になった。
さらに、11年3月の東日本大震災では、多くの患者データが失われたことから、医療情報の外部保存の必要性が指摘されるようになった。
一般企業のICTでは、近年「クラウド」が大きなテーマになっており、コスト削減策として期待されているが、ここにきて医療機関でも活用事例が出始めている。
このようなICTの動きを病院はどのようにとらえたらいいのかを考えてみたい。【大戸豊】
【寄稿】医療情報とクラウド- サービス内容や対価、保証内容の吟味を
■医療情報システム特有の事情
ヘルスケア分野のITコンサルタントであるAnnexe R&Dの井形繁雄代表は、システム開発の潮流について次のように話す。
これまでは、その企業や病院に適したオーダーメードシステムを追求するために、機器を含め自社内で情報システムを保有・運用する「オンプレミス」型のシステム開発が主流だった。
これに対し、標準化が比較的容易な業務、例えば、各企業の経理システムや、航空券の予約システム、クレジット決済システムなどは、「クラウド」で供給される汎用的なシステムを使用することで、ユーザー側はコストメリットを期待し、事業者側も仮想化技術を駆使して効率的なサービス供給を図り、ユーザーの期待に応えるという好循環ができているという。
井形氏は、先に述べたような一部の業務システムでは、クラウドにコストメリット(低価格)を期待することは正しいとする一方で、医療情報システムの特徴を考えると、“汎用システムを低価格で提供”という構図が本当に成り立つのかと、疑問を呈する。
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