中央社会保険医療協議会での医薬品などに対する費用対効果評価の導入の可否などをめぐる議論が遅れている。費用対効果評価専門部会では当初、今年の秋をめどに、具体的な評価の運用手法について整理する予定だったが、31日の会合で厚生労働省側は「議論すべき項目が残っており、引き続き十分に議論をいただいた上で、次の段階に進みたい」とスケジュールを説明。委員からは慎重な議論を歓迎する声が上がる一方、「時間的制約もあるので、どこかで折り合う必要がある」などとする意見も出た。
31日の会合で、鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は「(人事異動の前の)事務局の下、拙速と言うか強引に進めようとしてきた費用対効果評価について、新しい事務局に変わり、じっくりと取り組もうとするスタンスに変わったのは非常に良かった」と述べ、慎重に議論を進めるよう改めて強調。
一方で、万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)は、「時間的制約もあるので、どこかで折り合って、ひとまず仮定の評価尺度を設定して、いくつかの具体的疾患に応用し、日本に導入しやすいかどうかを評価する時期に来ているのではないか」と指摘した。
■日本独自のQOL評価手法の確立を
同日の部会では、費用対効果評価の効果指標として、多くの国が使用している「質調整生存年(QALY)」における生活の質(QOL)の評価手法について、参考人の福田敬氏(国立保健医療科学院上席主任研究官)が説明。QALYは、生存年とQOLを考慮した指標で、完全な健康状態を1、死亡をゼロとしたある病態のQOLを「効用値」として表し、それに生存年数を掛け合わせて算出する。
福田氏は、QOLを評価するための代表的な手法として、「EQ-5D」という、患者自身が記入する5項目の質問で構成された評価尺度を紹介。5項目は「痛み/不快感」や「不安/ふさぎ込み」「身の回りの管理」などで、それぞれについて3段階から成る選択項目を選ぶ。これについて、嘉山孝正委員(全国医学部長病院長会議相談役)は「患者さんの感覚には幅がある」ことなどを問題視し、日本独自のQOLの評価尺度を確立すべきとした。【津川一馬】
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