中央社会保険医療協議会の薬価専門部会(部会長=西村万里子・明治学院大教授)は18日、製薬業界側の加茂谷佳明専門委員(塩野義製薬常務執行役員)らから、長期収載品(後発医薬品のある先発医薬品)の薬価のあり方について意見聴取した。6月の前回会合では、長期収載品を後発品並みの薬価に引き下げた場合の影響を示すよう求める声が委員から上がっていて、加茂谷専門委員はこれに対する解答として、「同一価格にすることで、短期的に薬剤費の削減が見込まれたとしても、治療選択肢の減少と医薬品産業の衰退により、医療水準に不利益が生じることになるのではないか」と述べた。
また、先発品には研究開発段階からのさまざまな蓄積された情報があり、適正使用につなげることができるといった役割があるのに対し、後発品は薬剤費の効率化に寄与するなど、期待や役割が異なっていることを指摘。その上で、「それぞれの特徴を生かしながら共存することで、医療の質の維持・向上と、薬剤費の効率化を実現できる」と述べた。
さらに、長期収載品の薬価を後発品並みに引き下げた場合、長期収載品の使用が中心となり、後発品が市場から撤退したり、新規に参入しなくなったりする場合と、先発品が撤退する場合の2つのケースが想定されると指摘し、「長期収載品のみか後発品のみか、どちらかの成分しか残らない、先進国には見られない市場構造になるのではないか」との見方を示した。
その上で、後発品の新規参入がなくなることなどにより、長期収載品の薬価のさらなる引き下げが期待できず、「中長期的には薬剤費の効率化が望めない」といったデメリットが生じるとした。
意見交換では、診療側の安達秀樹委員(京都府医師会副会長)が、「長期収載品からも研究開発の経費を捻出するというのは、(先発品の特許満了後の後発品への)置き換えが海外に比べて進んでいない日本固有の現象であり、言葉は厳しいが甘えの構造ではないかとあえて言いたい」と指摘した。
一方、支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会専務理事)は「研究開発費について、成功せずに終わるリスクを考える必要があることや、長期収載品からも若干利益を得て、それを開発投資に回さなければいけないことは、概念としてはその通りだと思う」と理解を示した。さらに、適正な利益を上げ続けなければ企業の持続性は担保できないのは当然とした上で、長期収載品と後発品の話なので、先発品メーカーと、後発品の専業メーカーの利益率や、海外との利益率の比較のデータを提示することなどを求めた。【津川一馬】
(残り0字 / 全1151字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】