医薬品などの保険償還の可否や、価格設定などに費用対効果の評価を導入する動きがいよいよ本格化する。中央社会保険医療協議会(中医協)の下に新たに設置された「費用対効果評価専門部会」が23日、初会合を開く。厚生労働省は、2014年度の診療報酬改定で対象を限定した上での試行的導入を目指しているが、日本製薬工業協会(製薬協)は「性急な導入には反対」とする見解を4月に発表。5月17日の定例記者会見でも、手代木功会長が「個人的には、そう簡単にやれるものではないと思っている」と発言しており、議論は難航しそうだ。
しかし、検討の開始を前に、日米欧の製薬団体が慎重論を唱える見解を相次いで発表。製薬協は、諸外国での費用対効果の評価の実態について、保険償還の制限や薬剤費の抑制に主眼を置いた価格設定に用いられていると主張。結果として、患者が必要とする医薬品がタイムリーに臨床現場に届かない状況が生じているとしている。
■専門部会では共通ルールを策定
費用対効果の評価の導入に当たり、厚労省は3段階の検討を想定している。23日に初会合が開かれる「費用対効果評価専門部会」では、医薬品や医療機器、医療技術の費用対効果の評価における「効果の指標」や「効果を測る際の留意点」などについて、共通ルールを策定。その後、医薬品、医療機器などのそれぞれの評価制度に応じて、薬価専門部会などで個別ルールを作り、最終的には薬価算定組織などで具体的な運用方法を決める。
当面は、保険収載の判断基準や価格評価への反映などといった費用対効果の評価の活用方法や、評価の手法などを検討する予定だが、議論で大きな争点の一つとなりそうなのが、評価を導入する対象だ。
14年度の試行的導入の対象について、4月25日に開かれた中医協の総会で厚労省は「粒子線治療」などを例示したが、委員からは代表的な医薬品なども選ぶよう求める意見が上がった。厚労省側はデータの収集に時間がかかることを理由に、12年度の早い段階で評価対象を決めるよう求めている。
一方で、試行後の本格導入の対象についても、試行的導入の対象と同時並行で議論が進められる予定だ。評価の実施に必要な人員の不足を懸念する声もあり、すべての医薬品や医療機器などを対象とするのではなく、ある程度絞り込むことも想定される。同日の総会では、新規の医薬品などだけでなく、既存のものも評価対象に含めると「相当大変な作業になる」などの声が委員からあった。また、抗がん剤など特定の医薬品に絞ることについては、厚労省が「そういうオプションもあり得るが、なぜ抗がん剤だけなのかを合理的に説明できないと難しい」(担当者)としている。
費用対効果評価専門部会は、12年度中に4回程度開催。策定した共通ルールなどを総会に報告した後、13年度以降、試行的導入に向けた検討を進める予定だ。【津川一馬】
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