―診療所に関しては、一般の外来をカバーする通常の診療所と、在宅医療や看取り機能を持つ在宅療養支援診療所の役割の明確化が焦点になっています。
在宅療養支援診療所(在支診)は現在、全国に1万2000以上ありますが、実際に看取りを行っているところはその半分にも満たず、ある意味、われわれの意図した役割が十分に果たされていない状況です。在宅で死を迎える人の数は増加が見込まれ、現在の在支診がフルに機能を果たしてもすべてをカバーするのは難しいでしょう。看取りや在宅医療に特化した一部の診療所だけではなく、例えば通常の外来診療を行っているような診療所にも、時間的に余裕がある範囲で訪問診療に加わっていただかないと、とても足りません。ただ、医師が1人しかいないような診療所が24時間体制でこうしたことを行うのはとても難しいでしょう。そのため、在宅療養支援病院のような施設とネットワークをつくり対応しているようなケースをどう評価するかも焦点になるはずです。
―今までの議論を見ていると、在支診に関しては、看取りの実施件数やスタッフの人数によって2段階にして、なおかつ一般の診療所からの参入を促す形にするのかな、という印象です。
この点についても、具体的なことは今後の検討課題ですが、われわれが考えているような在宅医療の支援に取り組んでいただくには、一定のインセンティブが必要なわけです。半面、在支診に看取りをしていただいた場合、ご家族には1万円程度を負担していただくことになり、現場からはこれだけの負担をお願いするのは心苦しいという声も上がっています。そういう意味では、例えばご家族の悲しみを和らげるためのケアの実施状況などを評価に反映することもあり得ると思います。中央社会保険医療協議会(中医協)では、こうしたこともふまえて患者側や現場の先生方にご納得いただける形を議論することになると思います。
―2012年度の報酬改定では、診療報酬上の地域性の配慮も焦点になりそうです。
現行の介護報酬は、地域によって報酬全体が傾斜配分される仕組みです。12年度には新しい地域区分が導入される予定と聞いていますが、人件費や物件費などの水準を踏まえて傾斜配分を決めていて、これにはこれで合理性があると思います。
それでは医療はどうかを考えると、介護には少ない医師の人件費という要素が入ってきます。具体的には、医療のコストの5-6割が人件費で占められ、そのうちの2割程度が医師の人件費です。重要なのは、医師の人件費は都市部よりも地方の方が高くなる点です。都市部では確かに地価が高いのですが、この点を反映すると、全体のコスト構造は相殺されて、地方と都市部にそれほど差がなくなってしまうのです。入院基本料への地域加算のような形で補正したり、自治体が独自に報酬体系をつくったりするようなことはあり得るとしても、介護のように報酬体系全般にわたる地域補正を医療に導入するのは難しい。
むしろわたしたちが注目するのは、医師や看護師がそもそも集まりにくいなど、地方であるが故に“重荷”を背負っているというか、限界を持っているところを都会の病院と同じように評価していいのかどうかという点です。例えば、スタッフの専任要件を満たせないために緩和ケア加算を算定できていないのに、こうした取り組みに医師が一定以上関与している病院を全く評価しないでいいのかどうか―。こうしたことも中医協で議論することになるでしょう。
―人員配置を満たしにくいような地方のための基準を新しく作り、2段階で評価するようなこともあり得るのでしょうか。
議論の対象となることは十分あり得ると思います。
(残り1128字 / 全2669字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】