【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
入院患者数の減少は病院にとって致命的であり、病床の稼働率を向上させるためにあらゆる手段を各病院は講じていることだろう。特に手術患者の獲得は、急性期病院にとって生命線となることから、他院からの紹介患者は病院の機能維持や成長のために重要な鍵を握る。しかしながら、紹介あり入院患者は決して増加していない。グラフは、全国のDPC対象病院における「他院より紹介あり」の入院患者数を1病院当たりにしたもので、2019年度の3,439人がピークであり、そこから元には戻っていない。
だとすると、顔の見える連携が大切になり医師による近隣医療機関のあいさつ回りを推し進めるような施策が提案・実行されることは多い。知らない医師よりも、気心の知れた方に紹介したいと思うのは人間の常であるから、決して効果がないとは言えないだろう。周囲の病院の地域連携室が医師を連れて近隣のあいさつ回りをしているのなら、自分たちも遅れをとらないようにするべきだ。
ただ、あいさつに対応する医療機関側の本音としては忙しい時に来てほしくないし、「実は迷惑だ」という声を聞くことも少なくない。近隣の中核病院から病院長や診療部長が訪問してくれば会わざるを得ないが、「患者を紹介してください」と言われるだけの見せかけの地域連携が効果的かと言えば、そうではないはずだ。営業のトレーニングを受けていない医師の同行訪問は、かえってマイナスの印象を相手に与えることすらあると私は感じている。
では、効果的な近隣訪問についてどのように考えるべきなのだろうか。
まず
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次回配信は11月25日を予定しています
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