4月の診療報酬改定では、高度で専門的な急性期医療を提供する病院が手厚く評価された。救急医療の「最後のとりで」としての機能を地域で果たす病院を想定し、2014年度に新設された総合入院体制加算1との違いは何か? そして、診療報酬の包括化を進めるのはなぜか? 宇都宮啓氏(写真右)と井上貴裕・ちば医経塾塾長のシリーズ対談。全3回の2回目は、診療報酬の設定に込められた国の意図に切り込んだ。【編集/兼松昭夫】
■短期滞在手術3拡大「DRG方式広げたかった」
井上 リハビリテーションに関しては、疾患別リハビリの点数設定にかなり差があります。どの領域のリハビリでも同じようにプロがやっているのに、なぜああなってしまうのですか。
宇都宮 診療報酬を設定する際には、基本的にそこに掛かる手間やコストなどを評価します。それに加えて点数設定による誘導的な要素ももちろんあります。リハビリについては、患者さんが寝た切りになって要介護状態に陥るリスクが高い脳血管疾患などの領域で点数を高く設定したといった要素もあるだろうと思います。
「同じようにプロがやっている」と言われますが、リハビリの内容は同じではありません。もしそのようなことを言ってしまうと、眼科だろうが耳鼻咽喉科だろうが外科だろうが内科だろうが、どれも評価を同じにしなくてはならない。それは、実際には無理です。
井上 雑多な機能をカバーする地域包括ケア病棟を作っても、幅広い疾患を診る総合診療医がいなくて結局、使いこなせないケースも多いと思います。医師の問題はどうでしょうか。
宇都宮 その辺りは、医師臨床研修推進室の初代室長として2004年(平成16年)の立ち上げに私が関わった新医師臨床研修によって変わりつつあるのではないかと思います。新制度が始まって数年後、都市部ではないある地域の病院長から、「当直アルバイトの医師が夜間救急で専門外の患者さんを断るケースがかなり減った」と聞きました。
もちろん、重症や高度な専門性が必要な場合は別ですが、そうでなければ救急としてとにかく引き受けて、ちょっとした骨折や急性腹症などなら、専門外でもとりあえずの処置をして様子を見る。そして朝になってから専門科に診てもらうようなケースが増えたそうです。
救急隊や患者さんからは喜ばれて、特に問題は起きていないとのことでした。新制度の研修を受けた医師は既に臨床医全体の3分の1を占めていて、この割合は今後、さらに上昇します。医師は細分化された領域の一部しか診ないという時代は、もう終わりに向かっているのです。
井上 14年度(平成26年度)の診療報酬改定では、入院5日目までに行った場合に算定する短期滞在手術等基本料3の手術や検査の対象が、それまでの2種類から23種類に拡大されました。
宇都宮 診療プロセスが標準化されて入院期間の短縮が進み、かつ重症の患者さんが少ない手術や検査の診療報酬はできるだけ包括すべきだろうと考えました。診療報酬はできるだけシンプルな方がいいというのが私の考え方で、
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