新型コロナウイルス感染症の「第3波」では入院患者の受け入れ病床が各地で逼迫し、民間病院の対応の遅れを批判する声が上がった。民間病院の対応は本当に遅いのか-。日本医療法人協会の加納繁照会長は「実態を知らない指摘だ」と反論する。【聞き手/構成・兼松昭夫】
■救急搬送の9割超は「コロナ以外」
民間病院による新型コロナへの対応が進んでいないという批判が広がったのは、厚生労働省が2020年10月に公表したデータがきっかけだ。それによると、自治体病院の7割、日赤など公的病院の8割が新型コロナウイルス感染症の入院患者を受け入れている。それに対し、民間の受け入れ病院は2割に届かず確かに遅れている印象だ=図1=。
図1 自治体・公的等・民間別の新型コロナ患者受け入れ可能医療機関数・割合
厚生労働省「地域医療構想に関するワーキンググループ」(2020年10月21日)の資料を基に編集部で作成
ただ、残念なのは、新型コロナを受け入れていない病院が何をしているのかという視点を欠いていることだ。厚労省が同じ日に出したデータによると、自治体立、公的、民間を含む二次救急を担う2,879病院のうち4割近くが、新型コロナの受け入れにも対応している。感染の拡大を抑えるためにはそうした病院が不可欠だが、医療崩壊を食い止めるには、むしろ残り6割の救急病院こそがカギになる。脳卒中や心筋梗塞など、通常の救急医療を必要とする患者をそうした病院でカバーしているからだ。
救急搬送される全患者のうち、新型コロナの患者は1割ほどにすぎない。残り9割程度は通常の医療の患者だ。それらの双方をカバーし切れない状況が「医療崩壊」に当たる。それを防ぐには、経営判断を柔軟に下しやすい民間病院を中心にして地域で役割のすみ分けを進めるのがベストだ。
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