コロナ禍において拍車がかかる看護師不足。一方で、看護学生の学習機会の損失も深刻だ。看護職養成校では、96.6%が病院での実習を断られた経験を持ち、老年看護学や在宅看護学といった高齢者領域でその傾向が顕著だった。調査結果を公表した日本看護学校協議会共済会は、現場に近い環境での実習を後押しするために、養成校のICT環境の強靭化を提言している。同時に、臨時実習が十分にできなかった卒業生の研修や、配属に際して病院による配慮を促すガイドラインの整備などを求めている。【吉木ちひろ】
調査は、日本看護学校協議会共済会の総合保障制度に加入する看護師・准看護師養成校を対象として2020年11月26日-12月7日に実施したもの。新型コロナウイルス感染拡大への対応について、731校から回答を得た。学校種別は、専門・専修学校451校(61.7%)、大学125校(17.1%)、高等学校5年一貫49校(6.7%)などとなっている。
それによると、706校(96.6%)が新型コロナに関連した事情を背景として、実習施設から学生の受け入れを断られる経験をしていた。調査結果のレポートは、その背景として、感染拡大初期における感染防護具の不足や、クラスターの発生予防のための管理・監督の負担を指摘している。学生1人当たりの実習時間の短縮などの調整を経た結果、臨地実習を実施した養成校は696校(95.2%)で、できていない養成校は24校(3.3%)あった。実習施設から学生の受け入れを断られた706校のうち、623校(88.2%)は校内実習を導入して臨地実習の補填を行っていた。
学生の受け入れが不可とされた実習領域については、「老年看護学実習」495校(70.1%)や「在宅看護学実習」430校(60.9%)のように高齢者を対象とした領域が多く、在宅医療や介護領域も含めた影響が懸念される。
学生が、患者と対面して看護技術を試みる機会にも深刻な影響がうかがえる。
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