2019年10月より社会保障審議会・介護給付費分科会の委員を務める、日本看護協会常任理事の岡島さおり氏。21年度介護報酬改定の審議結果についての評価や、今後の課題を聞いた。【齋藤栄子】
日本看護協会常任理事 岡島さおり氏(インタビューは21年1月22日にオンラインで実施。写真は日本看護協会提供)
-審議を終えて今の気持ちを聞かせてください。
新型コロナウイルス感染症で全事業所が大変な状況にある中で、財源が厳しい状況下でも0.7%のプラス改定率を確保できたことは評価します。5つの横断的事項に沿って審議してきましたが、感染症や災害対策、BCP(事業継続計画)の策定や虐待防止などが全サービス共通事項として強化され、サービスの質向上につながることを期待しています。一方で、人員基準の緩和やユニットケアの定員増など、運用方法によってはサービスの質低下、現場の負担増につながりかねない懸念もあり、今後の詳細な検証が必要でしょう。
-人員基準の緩和には最後まで懸念を示されていました。
人材確保が困難な状況において、現場へICT導入を浸透させる方向性はよいと思いますし、ICT活用の下、CHASEやVISITを統合して一体的に運用する新しいシステムを普及し、科学的介護を推進する方向性にも賛成です。けれども、見守り機器等の導入を根拠に夜間の人員基準が緩和されたことに関しては、十分な検証がなされないまま、人員確保の困難という課題に引っ張られる形で決まった面もあると認識しています。テクノロジーの活用は、本来は介護負担や業務負担の軽減、ヒューマンエラーの予防、という目的でスタートしたはずです。機器の使用で業務負担が減るから人員を減らせる、という議論は少し短絡的ではないでしょうか。
テクノロジーの導入前後で何がどう変化したのか、データを集めて検証することが必要です。業務負担増により離職につながるケースがないか、今後は、離職理由をしっかり確認していくことも必要となるでしょう。多数の職員配置があれば、機器を導入することは一定の効果があると思いますが、夜間の少人数体制で、さらに見守り機器の対応も加わった場合の負担や不安はどうなのか、利用者に不利益が生じていないかを検証していく必要があります。
-訪問看護ステーションの看護職員割合の基準化見送りをどのように受け止めていますか。
最終的には、全ての訪問看護ステーションではなく、看護体制強化加算を算定する訪問看護ステーションで看護職員6割以上の要件が導入される形に落ち着きました。
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