【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■医療システムの持続性を担保するための施策
新型コロナウイルス感染症の影響により、全国的に医療機能の維持が極めて厳しい状況にある。このような状況において、筆者の得意とする病院経営改善を目的とするデータ分析業務は不要不急である。とはいえ、医療システムの持続性を担保するために、2020年度上半期の医療機関のデータ分析を通じて、次のような施策の提言を行ってきた。
短期的施策
1.補助金、助成金、交付金などの拡充
2.人員配置、実績要件などの施設基準の要件緩和
中長期的施策
3.損害保険会社の異常危険準備金を参考にした積立金制度とそのための財源確保
施設基準の要件緩和などの短期的施策については、以前「第3波を受け診療報酬の要件緩和を今すぐに」で述べた。
また、中長期的施策で挙げた積立金制度は、持続性担保のために財務的余力を持つべきであり、患者に広く薄く負担してもらうべきとこれまで他の場で述べてきた。損害保険会社の異常危険準備金における積立限度額の設定や、益金・損金算入などのルールは参考にできる点が多い。医療の非営利性に鑑みれば、積立金制度は持続性の担保に貢献するはずだ。その費用負担として、入院患者1日当たり1,000円程度の上乗せなどの提案もしてきた。
12月18日の中央社会保険医療協議会の総会にて、21年4月から9月末まで初・再診は5点、入院は1日当たり10点上乗せされることが了承された(「初・再診5点加算、感染予防策実施で」)。
1日10点(100円)では、筆者が主張する1日1,000円には遠く及ばない。また、あくまでも感染予防策を講じている医療機関への評価であり、積立金の制度を意図した加算ではないが、このような加算が設けられた意義は大きいだろう。ぜひ未来志向で議論を深め、恒常的な制度となることを期待したい。
■コロナ禍で考え直す経営改善策
国・都道府県レベルの施策を期待する一方で、日々の業務の見直しによる経営改善も重要である。そこで、基本に立ち戻り、病院経営改善の余地を探る方法について考えてみたい。
病院経営の改善の基本は「収入を増やす」か「支出を減らす」のどちらか、もしくは両方である。まず、収入を増やすことについて、ロジックツリーで整理してみた=図1=。
図1 「収入を増やす」思考の整理イメージ(急性期病院を想定)※クリックで拡大
まず、病床機能をそのまま維持するか、そうでないかで分けた。後者の機能転換を図るのであれば、院内に地ケアや回リハの病棟を開設することで、これまで転院させていた患者を院内にとどめることができ、病床利用率の向上が期待できる。この検討には、現状の入院患者の疾患や病態を分析し、新たな病床のニーズがあるか確認する必要がある。また、「看護必要度」や入院単価、在宅復帰率などの精査が求められる。また、地域によっては、地域医療構想調整会議などでの議論が必要になることも想定されるため、即時実行することは難しいかもしれない。
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次回配信は1月20日5:00を予定しています
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