武久洋三・日本慢性期医療協会会長(平成医療福祉グループ代表)へのインタビュー。後半では、介護保険制度の行く末について、大局観を持って話し合うための協議の場の在り方と、自身の経営者としてのスタンスについて聞いた。医療・福祉の総合的なサービスを提供する事業体として、国内有数の規模を誇る同グループだが、安定して事業を継続するための工夫として挙がったのは、一見、地味にも見える取り組みの積み重ねだった。【聞き手・吉木ちひろ】
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■20年経って見えてきた介護保険制度の限界—2極化する国民への対応が必要
-要介護者をつくらない政策について、急性期病棟の体制のように川上から見直す必要があるとすれば、社会保障審議会・介護保険部会や介護給付費分科会での議論だけでは難しそうです。
「本来なら、医療と介護の総合的な確保について議論する医療介護総合確保促進会議をもう少し機能させ、急性期医療における高齢者対策をしなければならない。これまで、社保審の医療保険部会や介護保険部会の委員を後任に譲り、介護給付費分科会の委員も2021年度介護報酬改定の議論を最後に退任する予定だが、こうした思いもあり、医療介護総合確保促進会議の委員は続けていくつもりだ」
「介護保険制度ができた当初と今の状況を比べた介護現場・事業者の変化としては、サービス付き高齢者向け住宅などを含めた高齢者向けの住まい・施設系サービスが著しく増え、寝たきり状態なども含む重度の要介護者の受け皿になっていることに着目している」
「さらに、20年前は顕在化していなかった課題だが、介護サービスを必要とする人が富裕層と貧困層に2極化している。セーフティネットとしての役割が期待される特別養護老人ホームでも、ユニットケアの推進策に伴い、月額の入居費用が最低でも15万円以上、両親が2人施設に入居するとして30万円以上必要という状況になっている。このような金額はとても払えないから、10万円以下で入れる安い住宅のニーズが増えている」
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