【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
新型コロナウイルスの影響により、病院、特に急性期病院の2020年度第一四半期の業績が、対前年度比で悪化していることを前稿「より濃厚な治療で医療の質を高めこの難局を乗り越える」で示した。業績悪化には、初診紹介患者数と予定手術件数の減少が大きく影響していた。その後、日本病院会等の追加調査から7月の診療実績が明らかになり、これ以前よりも改善傾向にはあるものの、いまだ低調であることが明らかになった。
グラフ1は、同じく日本病院会等の調査による4月から7月までの手術実績である。緊急事態宣言が解除された後も以前の状態には戻っておらず、9月が終わろうとしている現在も同じ状況が続いている病院は多いだろう。
この10月からは22年度診療報酬改定に向けて、DPC特定病院群の実績評価期間が始まる。当該評価では、大学病院本院の最低値(明らかな外れ値を除く)が基準値となるため、新型コロナウイルス感染症患者を多数受け入れている大学病院本院が、どのような実績を示すか不明確であることに加え、各病院の実績そのものも極めて低調に推移することが予想される。
手術件数等について国は、臨時的な取り扱いとして新型コロナ感染症患者を受け入れた病院については「基準を満たしているものとして取り扱う」という配慮をしてくれたし、21年度機能評価係数IIでも、コロナ患者を受け入れた期間については震災等の特例と同様の取り扱いになるだろう。
しかし、これから秋冬にかけて第3波が襲来するかもしれないし、この状態が続く中で適切な実績評価ができるのかという疑義も生じる。とはいえ、DPC特定病院群の入れ替えを行わなければ、それは不平等でもあり、制度としてどのような対応をするかは今後の議論次第になる。ただ、病院としてはどのような環境下であろうとも、実績を積むべく努力を惜しんではならない。手術実績はDPC特定病院群の評価だけでなく、そもそも急性期病院の診療収益にとって極めて重要な要素であるからだ。
本稿では、医療機関群、あるいは病床規模別等の手術実績を踏まえ、「戻らない手術」をどう考えるか、私見を交えて言及する。
急性期病院にとって手術は極めて重要だが、手術実績は外科の評価のため「内科を軽んじている」と感じる方もおられるかもしれない。グラフ2は、千葉大学医学部附属病院(以下、千葉大学病院)における「退院患者に占める手術患者割合」を診療科別に見たものであり、内科系診療科も上位にあることが分かる。手術室における手術は少ないが、
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次回配信は10月12日5:00を予定しています
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