介護保険制度の創設と同時に、ケアマネジメントを担う専門資格として創設された介護支援専門員(以下、ケアマネジャー)。この20年の間に、期待される役割の広がりや変化が見られる。また、介護保険制度の改正や介護報酬改定を巡る議論では、度々その「質」が問われてきた。財政論も相まって、ケアマネジメントの有料化を巡る議論は10年来平行線の状態が続いている。今、社会の要請に対してケアマネジャーはどのような対応が必要か、また、中立的な立場からその専門性を発揮し、ケアマネジャー自身が前向きに将来を設計していくために、協会として国にどのような働き掛けをしていくのか、日本介護支援専門員協会の柴口里則会長に話を聞いた。【聞き手・吉木ちひろ】
-介護保険制度と同時にケアマネジャーの資格が創設されて20年が経ちます。これまでの変遷をどのようにとらえていますか。
「介護保険制度ができたことで、介護が必要な人へ提供されるサービス内容を市区町村が決めていた『措置』から、本人が必要なサービスを選択する『契約』に基づくものに変わりました。同時に公的扶助によって生活を支える『福祉』の枠組みではなく、医療、年金、雇用、労災と同様に個人に起こり得るリスクを、相互扶助によって支える保険制度に移行しました。
医療保険の場合は、利用者がサービスを受ける際にあまり意識することもなく医療機関の窓口に保険証を提示します。しかし、介護などそのほかの保険の場合は給付を受ける際に、利用者申請が必要です。その申請の際の窓口役を求められたのがケアマネジャーです」
「ケアマネジャーという職種ができたことによって、利用者が自分の訴えをケアマネジャーに伝え、ケアマネジャーはそれを『代弁』する機能を果たし、利用者をしっかりモニタリングしていくというプロセスが存在するようになりました。
初めてできた資格ですから、当初はその職能の発揮の仕方も、ほかのサービス提供者、自治体、多職種との連携も模索状態でした。
報酬改定や制度改正によって、介護予防支援が介護保険から切り離されたり、ケアマネジャーの受験要件が厳格化されたり、といった動きにも見られるように介護保険制度の中における我々の位置付けや期待される役割・能力は、その時々の社会ニーズに応じて定義し直されています
しかし、私たちがどこを見て仕事をするかという部分はぶれてはいけません。ケアマネジャーというプロセス、私たちプロがいて、状態や環境の変化に応じて変わっていく利用者のニーズを代弁することができるのです」
「職域の広がりは社会的ニーズの表れで、私たちがそれだけ期待されているということです。これにしっかりと応えていくとともに、専門性を伴う仕事に見合う対価を求めていきたいと思います。
特に、居宅介護支援事業所は赤字続きだという現状がありますから、これをどのようにプラスに持っていくかを考え、訴えていかなければならないと考えています」
-確かに、介護事業経営実態調査の結果を見ると、居宅介護支援事業は赤字が常態化しています。こうした状況を踏まえて2021年度介護報酬改定、あるいはその先を見据えて、協会として、国や制度にどのようなことを求めていきますか。
「まず、何をもって赤字と言われているかということを、気を付けて見る必要があります。
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