【特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長 藤井将志】
熊本県を襲った7月の豪雨災害では、県南部を中心に医療現場にも深刻な被害をもたらした。特定医療法人谷田会が運営する谷田病院(甲佐町)の藤井将志事務部長は、日本医師会災害医療チーム(JMAT)の支援活動にロジスティック担当として急きょ参加し、現地入りした。今回の豪雨災害で求められたのはどのような支援だったのか-。2回にわたってリポートする。
■雨がどんどん強くなり…
梅雨ってこんなに雨がひどかったっけ。「沖縄にいたころの台風みたいだ」と思っていたら、スマートフォンに警報音が鳴り始め、雨はどんどん強くなっていった。谷田病院がある熊本県甲佐町にも大きめの川は流れているが、幸いにも決壊することなく大雨を乗り越えた。ただ、同じ熊本県の南部地域では球磨川が氾濫し、後に激甚災害に指定される被害をもたらした。
かれこれ10年以上もテレビなしの生活を続けている私にとっては、被災の様子をビジュアルで頻繁に見る機会もなく、職場の雑談やSNSに流れる情報で知るくらい。それでも悲惨な様子がひしひしと伝わってきた。そんな状況に居ても立ってもいられず、災害支援に駆け付けた! という格好いい話をできたらいいのだが、そうした崇高な思いを抱いたわけではない。
大雨の週末が明けて病院に出勤すると、何人かの職員がそわそわして、2016年の熊本地震の時のように、「何か起こるのか!?」という空気を感じた。それを無視して、特に何も検討せず方針も出さなかった。ちなみに、熊本地震の時には99床の病院に20床を増設し、全国から80人ものボランティアを集め、被災した患者さんを受け入れる、という荒技をやってのけた。そのため、「この事務部長はまた何かをしでかすのでは?」という空気が漂っていた。
そうした中、被災地で濁流にのまれた介護施設の復旧を支援するため、谷田病院の関連施設で支援物資を集め、届けることになった。内部向けにチラシを早速作成して、全ての場所を足で回って物資募集を始めた。熊本地震の時に感じさせられたのは、物流が早々に回復するので、支援物資が必要な時期は意外に短いということだ。そこを乗り越えると、ある意味不要な物資が多くなり、言い方は悪いが、邪魔になる。そのため、必要だといわれたものに限定して2日間で集め、すぐ送ることにした。さすがに250人もいる組織なので、フロアいっぱいのタオルや衣服が2日で集まった。ちょっといいことをした気になり、満足感に浸り、それで終わるはずだった。
写真:フロアに集まった支援物資
■「ロジ担」を交代体制に
ところが、その週の半ばに差し掛かったころ、院長から呼び出され、「JMATの活動で県南地域を支援にいくかもしれない」と伝えられた。
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