急性期のベッド250床規模を運営する東京都内のA病院では、新型コロナウイルスの感染が地域で拡大した影響で、一般の患者の受け入れが最大で5割ほど減少すると見込んでいる。新型コロナ感染拡大期の特例措置として政府は、中等症以上の感染者を受け入れた場合に診療報酬を倍増させる特例措置を決めた。しかし、感染症指定医療機関ではなく、軽症の受け入れが中心のA病院では特例の適用を見込めず、経営への影響は避けられない。【兼松昭夫】
写真はイメージ(PIXTA提供)
A病院では、急性期や回復期病棟を整備し、二次救急の受け入れにも対応しているが、新型コロナウイルスの感染が地域で拡大し、状況が一変した。3月上旬以降は感染の疑い症例が院内で出始め、感染が判明した患者の受け入れも保健所の要請で始めた。4月下旬現在、院内の感染症病棟に常時10人ほどが入院している。
感染疑いの症例が院内で発生すると、患者の治療に関与していた医師や看護師、医療スタッフなど50人近くが一時は自宅待機を余儀なくされ、医療用防護具は供給が追い付かなかった。
医療物資や人手不足に院内感染のリスク…。二重苦、三重苦に現場が見舞われる中、4月にはスタッフや一般の入院患者の感染が明らかになった。
そうした混乱の影響が、新型コロナ以外の患者の受け入れに及んでいる。院内感染を防ぐため入院診療を縮小せざるを得なくなり、3-4月には、前年同月比で3割ほど受け入れが減少した。さらに、発熱があるなど感染が疑われるケースでは、救急搬送の受け入れも見合わせざるを得ない。
A病院では、感染収束の兆しを見極めながら一般の入院患者の受け入れを拡大する方針だが、先は全く見通せない。今後、最大で5割ほど入院患者が減少すると見込んでいる。A病院の事務長は「国や都の対応は常に後手に回り、市中感染が広がってしまった」と話す。「新型コロナの院内感染が広がった場合のダメージは計り知れず、それを防ぐには、現段階では外から持ち込まないようにするほかない」。
ただ、救急患者の受け入れを制限すると、病院にとって大切な収入源となる手術の縮小に直結する。A病院全体では1カ月当たり6,000万-7,000万円程度の減収を見込んでいるという。
■中小病院は潰れてしまう
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