新型コロナウイルスの感染拡大の影響は国の政策にも及んでいる。政府は当初、2040年に向けた社会保障政策の全体像を夏ごろ閣議決定する「骨太方針2020」で打ち出す方針を示していたが、具体策を話し合う肝心の全世代型社会保障検討会議がストップしている。関係閣僚や有識者に感染が広がるという最悪のケースを避けるため、オンラインでの開催を模索しているが、スケジュールは決まっていない。【兼松昭夫】
検討会議が19年末に固めた中間報告では、▽紹介状なしに受診した外来患者から定額負担の徴収を義務付ける病院を大幅に拡大▽一定の所得がある後期高齢者(75歳以上)の医療費の窓口負担を、現在の原則1割から2割に引き上げ―などの具体策を盛り込んだ。
団塊の世代が75歳以上に差し掛かり、高齢化が本格化し始める22年度初めまでの実施を目指す。それに向けて検討会議は当初、骨太方針2020と同じ20年夏に最終報告を取りまとめるはずだった。しかし、新型コロナの影響で2月を最後に議論がストップし、中間報告から踏み込んだ内容を書き込める状況に今のところない。内閣官房全世代型社会保障検討室の担当者は、「時間はないが、様子見」と話している。
そうした中、政府は23日に発表した4月の月例経済報告で、「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、急速に悪化しており、極めて厳しい状況にある」という判断を示した。全世代型社会保障の議論がたとえオンラインで進んでも、患者の負担増をこの時期に切り出せるのかは未知数だ。
本格的な高齢化が始まるのを前に、この国の社会保障の将来像をどう描くか。医療の姿を左右しかねない議論の行方が見えなくなった。
■二重苦、三重苦にあえぐ医療機関
院内感染のリスクに人手や物資の不足、「不要不急」な予定手術や入院の延期…。一方で、新型コロナウイルスの感染拡大は、医療機関の経営を揺るがしかねない可能性をはらんでいる。
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