【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
病院経営を成功に導くには、医療機能と経済性のバランスを図ることが必要になる。医療の質を向上させ、自らの機能を見極めた上で、患者のために継続的な医療提供ができる基盤を整える上でも、安定的な財務基盤を築くことが求められる。
2019年9月に厚生労働省が名指しで公表した424病院は、急性期病院として機能の見直しが望ましいということなのであろう。一般的に考えれば、このような機能見直しが必要な病院は、財務的にも問題をはらんでいると考えられる。ただ、連載でも指摘したように、医療経済実態調査では、療養病棟入院基本料1を届け出る病院の損益差額はプラスなのに対し、DPC対象病院、特に特定機能病院のような高度医療を提供する施設では、大幅なマイナスになっていた。つまり、高機能であることが経済的にプラスであるとは限らない
今回は名指しされた424病院のうち、公的病院でかつ病院別の財務状況が公表されている国立病院機構と地域医療機能推進機構の47病院のデータ※を用いて病院機能と財務状況について検証し、これからの病院経営について言及したい。
※なお、公立病院は補助金の繰り入れなしではほとんどがマイナスになることから、今回の分析では対象外とした
■データの出どころと基準値の設定
今回の分析は、病院別に公表されている17年度の貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書を用いて行った。
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次回配信は2月3日5:00を予定しています
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