調布東山病院(東京都調布市、一般83床、透析66床)は、1年前に二次救急指定病院となり、地域の救急を断らないための足場を固めてきた。早くから入退院支援を進め、今後は在宅分野を強化していく。18年度診療報酬改定で評価された項目を先取りしてきた同院は、都市部の中小病院が進める地域展開の好例といえそうだ。【大戸豊】
■「結局要請があれば、どんな患者でも診なければならない」
同院を運営する医療法人社団東山会の小川聡子理事長は、18年度の診療報酬改定では、今後も増加していく高齢者の救急を断らない病院が評価されたと話す。調布市周辺には大病院も多く、中小急性期病院の役割は高齢者救急、内科救急が軸になると考え、さまざまな対応を進めてきた。同院は2病棟(一般病床)で、今回全床を急性期一般入院料1で届け出ている。
同院は内科が中心で、今後も増加が見込まれる新生物、呼吸器、循環器(脳疾患、心不全)、感染症(ICD-10分類による)、そして年間9000件の内視鏡検査治療を実施していることもあり、消化器疾患の患者が多い。
小川理事長は内科急性期でも重症者は多く、認知症やせん妄を合併する人も多いため、手厚い人員配置が欠かせないと言う。しかし、これまでの診療報酬では、「急性期=外科、手術」「設備投資を要する医療こそが急性期」といったとらえ方が単価にも表れており、内科は過小評価されていると考えていた。
高齢者の救急では、いわゆる「サブアキュート」も多いのではと尋ねると、小川理事長は、救急を受けるときに、「これはサブアキュート」「これはアキュート」と区別するのは難しいとし、「救急は結局、要請があれば、どんな患者でも受け入れなければならない」と指摘する。ただし、明らかにショック状態など、三次救急が必要な患者は救急隊がトリアージするので、そもそも同院に要請が来ることはない。ゲートオープナーの所で「サブアキュート」と限定的に定義することには違和感を覚えるという。
小川理事長は「救急対応の体制整備と、救急要請のミスマッチは医療現場の疲弊と混乱の要因となり得る」と語る。今回、地域包括ケア病棟では「サブアキュート」の患者の受け入れが評価された。ただ、もともと急性期病棟を持つ病院が、一部を地域包括ケア病棟に転換するようなケースでない場合、ハードルは高いとみている。
昨年救急指定病院となった同院が、断らない救急を進める上での鍵は内科の専門医チームだ。
小川理事長は、「医師は専門外の患者を診るのは怖い」と言い、自身も以前は循環器以外の患者が怖くて仕方なかったと振り返る。そこで各科専門医師を集め、チームとして総合診療を実現できるようにし、医師同士で相談し合える体制をつくっていった。現在は、神経内科を除き、主要な内科医はほぼそろっている。
それぞれの専門医は、できる限り専門以外の患者を持つようにして、総合診療医として徐々に成長していく。病院として、「専門であるその医師がいないから受け入れられない」といったことをなくすためだ。
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