財政健全化を進める政府の新たな計画をめぐり、経済財政諮問会議が議論をスタートさせた。日本経団連の榊原定征会長ら民間議員は12日、2019-21年度を「構造改革期間」に位置付け、社会保障費の自然増削減にこの3年間、これまで以上に取り組む必要があると主張した。医療や介護ニーズが高まる75歳以上に22年度以降、団塊の世代の人たちが差し掛かるためで、“病床過剰地域”で病床を削減する病院に支援金を交付したり、診療報酬や介護報酬の包括化を拡大したりする具体策を新たに掲げた。ただ、社会保障費の自然増を具体的にどれだけ圧縮させるのかは示されておらず、今後の焦点になる。【兼松昭夫】
■安倍首相「具体的な検討」を指示
新しい計画は、政府が6月に閣議決定する「骨太方針2018」に盛り込まれることになっており、安倍晋三首相は同日の会合で、「具体的な検討」を関係閣僚らに指示した。また加藤勝信厚生労働相は13日、閣議後の記者会見で、削減額に関する質問に、「これからの議論だと思う」と答えた。その上で、「団塊の世代の方が75歳に入り始める2022年度までをどう見ていくのか。2040年あたりを見る中で、わが国の人口動態がどう変わっていくのか」と述べ、少子・高齢化の状況を2段階で見守る必要があるとの考えを示した。
一方、日本医師会の横倉義武会長は18日、CBニュースなどの取材に対し、社会保障費の自然増について、「これ以上抑制をかけると、地域医療を維持できなくなる恐れがある」と述べ、慎重な対応を与党などに求める方針を明らかにした。
医療や介護などの社会保障分野は、16-18年度が集中改革期間の「経済・財政再生計画」でも歳出改革の重点分野とされ、政府はこの3年間の自然増を計1.5 兆円程度に抑えることを「目安」にした。これを達成するため15年末には、「かかりつけ医」の推進や病床機能の再編など計44の社会保障改革を盛り込んだ工程表を策定。その結果、3年間の自然増は計1.9兆円のうち約4400億円が抑制され、政府は診療報酬本体や介護報酬引き上げのための財源も確保した。
19年度以降の計画に切り替わるのに合わせ、民間議員らは今回、19-21年度を「構造改革期間」と位置付け、社会保障費の自然増を抑えるためにこれまで以上の取り組みを求めた。社会保障費の自然増は、16-18年度の年0.65兆円程度に対し、団塊の世代が75歳以上になり始める22年度以降は、賃金や物価上昇による影響を含めると0.9兆円規模に膨らむとみられているためで、44の改革すべてを推進するだけでなく、新たなメニューの追加も求めた。
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