【千葉大学医学部附属病院 副病院長・病院長企画室長・特任教授 井上貴裕】
2016年度の診療報酬改定では、総合入院体制加算の要件が変更された。各病院では総合的な体制に磨きを掛けようと取り組んでいることだろう。総合入院体制加算は下位の「加算3」でも、500床程度の病院なら1億円以上の報酬になり、前向きに届け出を検討することが望ましいといえる。
この加算の届け出は、14年7月1日時点で「加算1」は5病院、「加算2」では278病院。1病院当たりの収入が最低1億-1.5億円で、その後も届け出病院も増えたとすれば、少なくとも300億円以上が投じられている計算になる。診療科を総合的にラインナップし、一定の機能を有する病院を評価する発想自体はあながち間違いではないが、財源不足の今日、あえてそれをする必要はあるのだろうか。
「総合的な医療の提供」はその病院が選んだ戦略だ。「総合的」であるために、新入院患者を獲得しやすいというメリットを既に享受しているはずで、追加的に評価が必要なのだろうか。この加算をすぐ廃止するのは現実的でないだろうから、まずは要件を厳格化し、ハードルを高くしてはどうだろうか。
今回は、「総合的」な体制を診療報酬で評価しても、機能分化の促進につながらない可能性に言及する。
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次回配信は8月21日5:00の予定です
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