多摩川病院(東京都調布市)の矢野諭理事長は、地域に根差し、ポストアキュートやサブアキュートを担うような病院を「地域多機能型病院」と呼んでいる。同院では、地域包括ケア病棟、回復期リハ病棟、医療療養病棟に病床機能をここ数年で広げ、地域との連携を強めつつ、紹介患者を増やしている。中央社会保険医療協議会で地域包括ケア病棟をめぐる議論が本格化する中、一つのヒントとなりそうだ。【大戸豊】
矢野理事長は9月23日のCBnewsセミナー「18年度同時改定を乗り越え、生き残るために」で、地域に根差した病床機能の展開などについて、自院のケースを基に紹介する予定だ。
■「病院は治療して早期に退院させる所」を念頭に置く
多摩川病院では、平成博愛会グループの傘下となった2010年の時点で、167床すべてが介護療養病棟だった。その後、病院の機能転換を徐々に進め、現在では回復期リハ病棟(58床)、地域包括ケア病棟(49床)、医療療養病棟(60床)という構成に再編成し、回復期を中心に軽度-中等度の急性期機能や重度の慢性期機能も担っている。
病床機能の転換によって同院では、入院患者の病態が多様化し、重症の患者も積極的に受け入れるようになった。病院の機能が多様化したことで、紹介患者が増加し、診療の質も上がったといい、矢野理事長は、それによって「地域からの信頼度が上がり、経営の安定化につながる効果も表れた」と話す。
病床転換は「病院は病気を治療して、できるだけ早期に退院させる所」という原則に従って進めてきた。回復期リハ病棟を13年8月に導入し、「患者の病気を治して帰す」という意識が職員にも浸透していったという。14年7月に一部の病床を地域包括ケア病棟に転換した際にもやはり、治療して早期に退院させることをポイントにした。
(残り2036字 / 全2784字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】