前・青森県健康福祉部長の一戸和成氏(現・厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全企画課課長補佐)は、同県の地域医療構想の策定(2016年3月末)を中心となって進めた。構想では、既存の病院を統合し、新たに中核病院をつくるプランが注目された。
弘前市の国立病院機構弘前病院と弘前市立病院の統合を核とした再編は、救急医療体制の確保と専門医療への対応が主な目的だが、その背景には深刻な医師不足がある。【大戸豊】
■若い医師に残ってもらうためにも中核病院を (残り1621字 / 全2508字)
一戸氏は、青森県の健康福祉部長時代に、今後の人口減少や救急医療体制の確保のためにも、再編は最後のチャンスと訴え続けてきた。国立病院機構の本部、地元の弘前大、医師会、議会などさまざまなステークホルダーに時間をかけて説明したという。
図 青森県の地域医療構想調整会議における検討内容
厚生労働省「医療計画の見直し等に関する検討会」資料より
医療資源を中核病院に集中させるのは、地域の救急医療体制の強化と併せ、若い医師が集まりやすい環境づくりを考えたものだった。弘前大医学部附属病院は臨床研修のマッチング率(大学病院の施設別定員充足率)が全国の国公立大で最下位※となっていることもあり、一戸氏は「ただでさえ青森県に残る医師が少ないのに、症例数の少ない中小病院中心の医療提供体制であれば、急性期をやりたい若い医師のモチベーションを維持できない」と危惧している。
また地元弘前大出身者として、地域枠の医師だけが青森に残ればいいというのでは寂しいといい、全国から医師が集まってくるような体制をつくり、弘前大の卒業生と切磋琢磨してもらえるようになれば、最終的に地域医療のレベルも上がることが期待されるという。
一戸氏は、地域の医療提供体制を良くしていこうという意味と、どうすれば若い医師に希望を持って働いてもらえるかを考えたと言い、「新しい専門医制度がスタートすれば、症例が多くなければなおさら医師が残らないと思う。そういった意味で、この中核病院の整備を提案した」と語る。
※ 厚生労働省平成28年度の医師臨床研修マッチング結果(2016年10月20日時点)
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