地域医療構想を実行に移す中で、都市部の急性期病院の役割とは何かー。東京都の「区西北部構想区域」で、地域医療構想調整会議の副座長を務める山口武兼氏(東京都保健医療公社豊島病院院長)は、2025年に向けて患者の流れが変化する中、急性期病院として地域の中堅病院との連携を強めたいと話す。【大戸豊】
■「病床減らされる」重圧抜きに議論できた
区西北部構想区域(豊島区、北区、板橋区、練馬区)では、7月上旬の調整会議でアンケート調査を基に地域の病院の現状について意見交換した。豊島病院のある板橋区でも6月下旬、医師会主催で区内の多くの病院長による会合があった。そこでは、忌憚(きたん)のない話し合いがされたが、東京独自の事情もあった。東京都の25年の必要病床数は約11.3万床で、既存の10.5万床から8000床程度不足するとの推計結果が示され、「病床が足りていない」ことになったのだ。
山口氏は「地域医療構想では、自院の病床が減らされる恐怖感がある。そのプレッシャーが少ない形で議論できるのは大きい」と強調する。その一方で、慌てて増床を進めることには懐疑的だ。理由は、必要病床数の推計のために設定した病床稼働率は、実態と比べるとかなり低水準で※、今後病床稼働率が上がり、平均在院日数の短縮が起これば、8000床の“不足分”もカバーできる可能性も考えられるためだ。
また、山口氏の周辺でも、近年は中小病院の閉院が幾つかあったが、病床を新たに増やすよりも、今ある病院を継続して運営していく方が、地域の限られた医療資源を有効に使えると考えている。
※高度急性期75%、急性期78%、回復期90%、慢性期92%で計算
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