急性期の入院医療の報酬を包括払いする仕組みとして2003年度に導入されたDPC制度。その対象病院が徐々に数を増す一方で、出来高払いの急性期病院も少なからずある。現時点で、厚生労働省は出来高払いの急性期病院の存続を認めているが、この先、包括払い“一択”の時代は来るのだろうか。【佐藤貴彦】
■DPC病院か否か、現状は“ハーフハーフ”
DPC制度の導入時、それに参加する「DPC対象病院」は82の特定機能病院だけだったが、対象となる病院の範囲が徐々に広がった。いわゆるケアミックス型など一般病棟の規模が小さい病院にも門戸が開かれ、今年4月時点で1664病院が指定を受けている=グラフ1=。
一方、一般病棟入院基本料などの7対1か10対1を届け出る急性期病院は現在、全国に3807ある=グラフ2=。このうち、DPC対象病院としての指定を希望する「DPC準備病院」は276(7.2%)で、残り1867病院(49.0%)が出来高払いに踏みとどまっている。
■インセンティブ与える「調整係数」がなくなる
DPC対象・準備病院の合計とそれ以外の病院との比率はほぼ“ハーフハーフ”だ。しかし、DPC対象病院が激減する可能性を指摘する声がある。DPC対象病院にインセンティブを与えてきた「調整係数」がなくなるためだ。
DPC制度の包括払いの報酬は、患者の主な傷病と実施した手術などの組み合わせ(診断群分類)に応じた包括点数がベースだが、調整係数がこれを補正し、DPC対象病院の報酬水準を前年度並みにしてきた。
ただ、調整係数の導入はDPC対象病院の経営状況を急変させないために設けられた時限措置で、別の係数による評価への置き換えが徐々に進んでいる。新たな係数は、病院が果たす機能などに応じて設定するもので、来年春の診療報酬改定で置き換えが完了する予定だ。そうなれば、調整係数が高かった病院では報酬水準の大幅な低下が避けられない。
これまで厚労省は、報酬水準の激変を避ける措置を講じるなど、置き換えを慎重に進めてきた。しかし、今後は激変緩和の対象を狭める方針だ。近い将来、新規参入が途絶えるばかりか、「制度に参加していると収益を確保できない」という理由で退出届けを出す病院が現れるかもしれない。
■7対1病院はDPC制度に強制参加へ?
それとは反対に、急性期病院がすべてDPC対象病院になるという見方もある。厚労省が一般病棟入院基本料について、今年3月の中央社会保険医療協議会の総会で、「患者の状態」や「診療の効率性」などを考慮した評価体系へと見直す必要性を指摘したためだ。どちらもDPC制度の評価体系に当てはまる。
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